編(アム)

オーストラリアでソーシャルワーカーになった中年の話

セメスターブレイクのダラダラした日々とMedicalisation

1学期があっという間に終わり、残るは最後の学期です。学童の仕事はクビになるしサポートワークの仕事は全然シフトもらえないし、ということですごく暇なのにお金を稼げない辛い日々を送っています。最近はYouTubeで怪談ばかり見ています(不思議大百科、都市伝説チャンネル、怪異サミット座談会が好き)。

 

先週は実習面接の結果も来ず、実習に合わせた時間で働けるバイトの面接後のアップデートもなく、お金がなさ過ぎて出かける気にもならず、結構精神的に追い詰められていました。しかしカウンセリングを勉強しているハウスメイトにその悲しみを打ち明けると、「今稼げないのは辛いけど、この期間に稼げたはずの金額なんて、卒業して就職したら簡単に稼げるでしょ?それよりブレイク中の暇な時間は、就職したら二度と手に入らないプレシャスなものやから!Don't worry!」と言われ、目が覚めましたのよ(ありがとTちゃん!)。その翌日に大好きな街(フードバンクとALDI、Op Shop(寄付された物品を安くで売り、資金調達するお店)がたくさんある笑)Nambourに行って、友人が泊まる時用の布団を買い、古本屋に行きました。

 

Nambour Book Exchange

地下にあるのですが、階段手前の入口でグラサンのおじさんが椅子に座っており、一度行くのを辞めました…中で何かの取引されてるから見張ってんの?と思って笑。でも渡りたい信号がなかなか青にならず、戻ることにしました。荷物チェックのために入口にいるのかな?と思ったのですが、おじさんは外の風に当たるために出ていたようです。というのも、店内、古い物のニオイがこんもり。若者2人がマイノリティの立ち位置や学術の役割などについて熱心に話しており、そちらが気になって本のタイトルがなかなか頭に入りませんでした。

 

私は古本屋がすごく大好きで、元々欲しい物ではなく、全然視野になかったところからドカーンと目に入ってくる物に出会えるのが嬉しい。しかしオーストラリアの古本屋は古本でも結構な値段だし、ペーパーバックだからなのか気持ち悪い斑点がついているなど、結構コンディションが悪い…なので内容を知っている本の英語版があれば買おうかな、と狙いを定めて見てみました。狙ったのはLouis Sacharのもの。彼の著書『Holes』(日本語名は『穴』)はジュニア向けで、私は日本語を中学生の時、そして英語版を高校の時に読んだので、その続編が見つかるといいな、と思い探しました。だって主人公の名前がStanley Yelnats(回文)。最高!伏線ってこういうことか、ということを教えてくれた物語です。

 

しかしLouis Sacharの本は見つけられず(フィクションとノンフィクションがごっちゃになっていて見つけ出せなかったのかも)、代わりにOliver Sacksのコーナーを発見しました。彼の『The Man Who Mistook his Wife for a Hat』(日本語名は『妻を帽子とまちがえた男』)がとても面白いと感じていたのでラッキー!『Hallucinations』(日本語名『幻覚の脳科学』)、『Uncle Tungsten』(『タングステンおじさん』)、『Awakenings』(『レナードの朝に』)など、複数ありました。状態がいいのはHallucinationsとAwakeningsでしたが、過去に買おうか迷ったことがあるのはAwakeningsなので、そちらを購入しました。

 

『The Man~』を読んだ感想は、「これは人間賛歌やなぁ~」でした。オリバー・サックスは脳神経科医ですが、病状を見るのではなく人間を見て、人間をadmireしている、そして彼が本の中で語る人々の興味深いこと。病気って「これは病気」とラベルを貼らなければネガティブなものにはならないんだな、社会がどう受け止めるかによって定義って変わるんやな~~と。一方で、オリバー・サックスが取り上げる人々は元々才能があり、元々素敵な人たちなのかな、とも思わされました(もしくは彼が1人1人の素晴らしさを見つける着眼点を持っていたとも思えますが)。でも世の中にはそうした「病気」があり、特に才能もなく、ただただ「病人」として扱われて人生を過ごす人たちもいるんやろうな~そういう人たちの人間性を見つけて受け止めるのがソーシャルワークやな~しみじみ、など。

 

これと関連するのが、1学期に受講したSocial Work in Health and Mental Healthでした。この授業ではJohn Germovの『Second Opinion』という本を中心に、「病気って結構社会学的に見れない?」という視点を提供するものでした。世の中は何でも病気にし、既にある不平等性をより強いものにしている、弱者をより弱くする、とか、社会経済的な影響が人々の健康状態に影響を与える、とか(Medicalisation of Inequality)。ソーシャルワーカーは病院など、健康・保健分野での実践がかなり多いので、over-medicalisationに加担しないのは大切だね、あくまでソーシャルワーカーとしてソーシャルな面を見ながら人々と接せるようにしようね、というメッセージが学期を通して共通認識となりました。

 

なので、学期終わりを祝うランチの場で350mlのスパークリングワインを飲んで酔っ払った私の状態をググったコーカソイドのクラスメイトが「それはinherited deficiency in the enzyme aldehyde dehydrogenase 2と呼ばれるそうだね」と言い出した際、「Stop pathologising Sak!!! Don't label her with a 'deficiency'! No to over-medicalisation!!!」と周りが言い返したのがおもろかったです。私からしたら、アルコールを飲んでも顔色の変わらない君たちの方が異常だよ、そっちの方が病気じゃなーい?って感じ!

 

まぁそういうわけで、『The Man~』と同じく色んな人の物語を紡ぐAwakeningsを読み進めていますが、やっぱり日本語にすればよかった…物語にたどり着く以前の時点で全然わからない。日本語では先人があらゆる単語を日本語訳してくれたし、状態や現象の名前を漢字から判断できるけど、英語になると全然わからん。同じ理由で私は実習先に病院を選びませんでした。身体の部位とか病名とかわからん過ぎる!しかし病院で実習をしたいクラスメイト間のどろどろの競争や、実習課のクソな対応(まぁこれは病院実習に限らずです)を見ていて、何で皆そんなにメディカルな方に進みたいの?と遠くから眺めていました。

 

なお、先週の終わりにかけて私は私の実習先からOKのメールが来ました。とてもハードコアで不人気な機関で、ここに至るまで実習課のせいで吹出物大爆発で髪の毛めっちゃ抜け(る気がし)ましたが、まぁ学べることは多いでしょう。また話せる内容の学びがあればここでも実習について書くかもしれません。

 

また、友人の家で寿司パーティーしましたwww ザ!ジャパニーズ!留学生!って感じで笑いました。タノシカタ。

 

ところで私たちの次の学年はソーシャルワーク大学院生は20人ほどしかいないそうです。その中で留学生は2人だけ。それで収入が減ったから実習課がポンコツなのかな?と邪推するなど。1,000時間の無償の実習を廃止してくれー!という署名も集まっているらしく、その制度廃止を待って入学しない人がいるのかな。留学生に関しては、IELTSで全ての科目7.0以上というのが結構ネックになっているのかも、と思っています。